クラブハウスの自室。

俺は寝る準備をしベッドに入っていた。

戸締まりや火の元の確認も済んでいる。
警備は管理会社が行なってくれるが、念のため自分でも用心するに越した事は無い。

今日はロロと俺しか居ないが、ロロは先に寝たらしいな。

再度自分の部屋の窓の鍵を確認しようと窓辺に寄る。

するとその時だった。

下に人影を発見した。

こんな遅くに誰だ?

泥棒や何かなら早く警察に連絡すべきだろう。

しかし、その人影は逃げたり隠れたりする事無く、むしろ見付かりたいのか此方に手を大きく振っている。

不審者だ。

しかし、暗闇に慣れてきた目でその人物を凝視して見ると、見知った顔が確認出来た。

スザクだ。

アイツは何をしてるんだ?

手を大きく振っているから此方に俺が居ることも向こうから分かっているのだろう。

仕方無く俺は窓を開け、下に居るスザクに声を掛ける。

「どうしたんだ、こんな時間に。軍は良いのか?」

するとスザクは笑顔で返答をした。

「軍は非番。さてルルーシュに問題です。今日は何の日でしょう?」

今日?

確か今日は、って0時を過ぎているから7月10日か?

腕を組み、考え込んでいるとスザクがカウントダウンを始めている。

0になる前に答えろと言う意味だろう。

そうだな…

「納豆の日か?」

以前聞いた日本人の食べ物、納豆。

語呂合わせで7月10日は納豆の日だと聞いた記憶がある。

勿論スザクが納豆の日ごときで此処に現れたのでは無いこともちゃんと分かっているが、少し意地悪をしてやりたくなった。

「違うよ。納豆の日じゃなくて、もっと大事な日でしょ?」

あぁ、分かってるさ。

でも言ってやらないぞ。

スザクの誕生日を覚えているなんて言ってやったら喜ばしかねないからな。

「じゃあ何の日だ?そんな大事な日なら教えてくれたって良いだろ?」

そう言い放つと、スザクはニヤリと口元を歪めた…気がした。

暗闇では細部まではよく見えないが、そんな気がした。

そして、教えてあげるよと俺に伝えると、スザクは部屋に入れて欲しいと言ったので、俺の部屋に入れてやるのだった。







「夜中だがお茶でも出すか?」

スザクを部屋に通し、二人でベッドに座る。

電気を点さなくても良いだろう。

それに点けたらロロを起こしかねない。

あとお茶は社交事例だ。

要ると言ったら空気が読めないのは昔からだと思って諦めよう。

「お茶は要らないよ。それに、白状なルルーシュは僕の誕生日忘れてるみたいだし?」

忘れては居なかったがな。

「そうか、誕生日だったんだな。おめでとう」

微笑んでそう言ってやると、スザクは心底嫌そうな顔をした。

本当に俺が忘れてるとでも思ったんだろうな。

確かに会えるかどうかも分からん相手の為にプレゼントを用意する気にもならなかったからプレゼントの用意はしてない。

それにコイツの事だ。

プレゼントは俺だとでも言ってやれば笑顔で食い付いて来るだろう。

そんな金の掛からない、しかも在り来たりなもので良いならくれてやる。

演劇や小説なら王道過ぎて笑いすら出ない所だがな。

それに、スザクに抱かれるのは嫌いじゃない…

むしろ一晩の回数が多いのを除けば気持ち良いから好きだとも思っているぐらいだ。

死んでもスザクには言わないけどな。

「誕生日忘れてたなら、プレゼントなんて用意してある訳が無いよね。

弟にはプレゼントあげるのに、僕には無いんだ?」

スザクめ、何故弟に嫉妬してるんだ?

確かにあれはナナリーの為に用意したプレゼントを、たまたま弟として記憶を刷り込まれたロロに対してやっただけだ。

今は記憶が戻っていないフリをしなければならないな…

「弟に誕生日プレゼントをあげるのは普通だろ?家族なんだし」

じっくりと観察するようにスザクは俺を見つめている。

ボロを出す訳にはいかない。

するとスザクはやっと笑顔になった。

口元しか笑っていないが、この際気にしないでおこう。

「そうだよね、家族だもんね。当たり前だよね〜」

「そうだぞ、スザク。当たり前だ」

そう言いながら俺も笑ってやる。

しかし次の瞬間、視界が変わる。

スザクの笑顔が真顔に変わり、スザクの両手が俺の両肩を掴んだと思ったらそのまま押し倒された。

「どうしたんだ、急に」

一応驚いたフリをしながら、上に居るスザクを見上げる。

スザク、急にじゃないんだよな?

ベッドに隣同士で座った時点からその内タイミングを見計らって押し倒して来るだろうとは踏んでいたさ。

「ルルーシュ、『弟』とは出来ない事、しようか?」

してるけどな。

お前らが派遣した偽の弟は、ちょっと誘ったら喜んで靡いたぞ。

部屋には隠しカメラあるんだろうが、それは偽装映像やら問題映像の削除等処理済みで、困らない様にしてあるしな。

そんな思惑等は読み取らせない様に、俺は少し目をスザクから背け、汐らしく頷いてみせる。

あくまでスザクの前ではスザクとしか関係を結んだことが無いかの様に。

ロロとしてるなんて分からない様にしないとな。

幸い暗いから体のあちこちにあるロロが付けたキスマークなんてバレないだろ。

「愛してるよ、ルルーシュ…」

そう言いながらスザクは俺の首筋に顔を埋める。

スザクのその台詞は真実なのか…

それを疑えば敗けだ。

そんな事を思いながら、俺はスザクに身を委せるのだった…

=つづく=





**あとがき**
もうすぐルルの誕生日ですよね?とか、半年も前の物上げんな!とか、思ってても言わないで下さい…
しかもまだ未完とか…
本気で済みません!!
08.11.22